深蒸し煎茶とは|普通の煎茶との違い、味わいの特徴とおいしい淹れ方
深蒸し煎茶のいちばんの魅力は、コクのある濃密な味わいです。茶葉が細かく、短い時間でも味がしっかりと出るので、急須に慣れていない方でも、その濃密な一杯にたどり着きやすいお茶です。
深蒸し煎茶とは、茶葉の製造工程の中で、蒸す時間を普通の煎茶の2〜3倍ほどに長くして作る煎茶です。葉が細かくなり、濃い緑の水色と、渋味の少ないまろやかな味わいになります。この記事では、普通の煎茶との違い、蒸し時間で何が変わるのか、深蒸し煎茶が生まれた背景、おいしい淹れ方までを解説します。
深蒸し煎茶とは
深蒸し煎茶は、摘んだ葉の酵素の働きを止める「殺青」のために茶葉を蒸す「蒸熱」の時間を、長くしてつくる煎茶です。茶葉を蒸して、揉みながら乾かすという流れはふつうの煎茶と同じで、違うのは蒸す時間だけです。煎茶そのものについては「煎茶とは」、茶葉がつくられる工程は「お茶ができるまで」で詳しく解説しています。
煎茶は、蒸す時間の長さによって「浅蒸し」と「深蒸し」に大きく分けられます。その違いを並べると、次のようになります。
| 浅蒸し(普通蒸し) | 深蒸し | |
|---|---|---|
| 蒸す時間 | 標準 | 浅蒸しの2〜3倍ほど |
| 茶葉の形 | 針のように細長く、形が整う | 細かく、粉や小さな葉が多い |
| 水色 | 澄んだ黄緑色 | 濃い緑で、にごりがある |
| 味わいと香り | すっきりとして、香り高い | 渋味が少なく、まろやかでコクがある |
| 抽出時間の目安 | 100〜120秒 | 90〜100秒 |
蒸す時間に法律で決まった秒数はなく、産地や作り手が、その年の茶葉の状態を見て決めています。浅蒸しと深蒸しのあいだにも、さまざまな蒸し加減のお茶があります。
蒸し時間が長いと、何が変わるのか
蒸す時間を長くすると、茶葉とその味わいには次のような変化が起こります。
茶葉が細かくなる
長く蒸すと葉の組織がやわらかくなり、そのあとの揉む工程で細かく崩れます。そのため深蒸し煎茶の茶葉は、針のような細長い形は少なく、粉や小さな葉が多くなります。
濃緑色の水色
茶葉が細かい分、水色がより強く出るためその色は濃い緑色になります。細かい微粉が水分中を漂うことで、深蒸し煎茶の濃厚な味わいと濃い緑が作られます。見るからに濃厚な水色は、深蒸しならではの持ち味です。
渋味がやわらぎ、まろやかになる
長く蒸すことで渋味が抑えられ、まろやかでコクのある味わいになります。深蒸しの産地として知られる静岡県菊川市の資料では、茶葉を長く蒸すと水に溶けやすいペクチンが増え、渋味が抑えられると説明されています。一方で、蒸す時間が長くなるほど、浅蒸しのような爽やかな香りは抑えられます。
深蒸し煎茶が生まれた理由と産地
深蒸し煎茶は、静岡県の牧之原台地で生まれました。このあたりはほかの産地より気温が高く、日照時間も長いため、茶葉が肉厚になって渋味が強く出やすく、かつては中級のお茶として扱われていたといいます。
そこで昭和27年(1952年)ごろから、六郷村(現在の菊川市)の農家たちが製法の研究に取り組み、茶葉を長い時間蒸すことで、渋味が少なく味の良いお茶をつくることに成功しました。これが深蒸し煎茶のはじまりで、菊川市は「深蒸し茶発祥の地」として知られています。
「煎茶とは」で「平地のお茶はコクのある濃厚な味わい」と書きましたが、深蒸しは、日差しの強い土地のお茶の力強さを、まろやかさに変えるための工夫だったとも言えます。
深蒸し煎茶は牧之原台地から周りへと広がり、昭和40年代には静岡県の外へ、昭和50年代には全国の茶産地でつくられるようになりました。1979年(昭和54年)には、全国茶品評会に「深蒸し煎茶」の部門も設けられています。
短い時間でも味がしっかり出て、水色も濃く出るところが市場で高く評価され、深蒸し煎茶は一時期、爆発的に生産量を増やしました。今でも静岡県は深蒸し煎茶を中心とした生産で知られ、各地でつくられています。たゆまの茶荘では、鹿児島・南九州のやぶきたでつくるとこのはと、宮崎で栽培期間中に農薬や化学肥料を使わずに育てたいしずえが、深蒸し煎茶です。
深蒸し煎茶のおいしい淹れ方
深蒸し煎茶は葉が細かく、味が出やすいのが特徴です。お湯に触れる表面積が増える分、抽出時間を少し短くします。一杯(150ml)分の目安は次のとおりです。
| 茶葉 | お湯の温度 | 抽出時間 | |
|---|---|---|---|
| 深蒸し煎茶 | 4〜5g | 70〜80℃ | 90〜100秒 |
| (参考)浅蒸しの煎茶 | 4〜5g | 70〜80℃ | 100〜120秒 |
- 沸かしたお湯を湯呑みに注ぎ、70〜80℃まで冷ます(湯呑みも温まります)
- 急須に茶葉を入れ、冷ましたお湯を注いで蓋をする
- 90〜100秒ほど抽出する
- 湯呑みに、最後の一滴まで注ぎ切る
最後の一滴まで注ぎ切るのは、急須にお湯が残ると、細かな茶葉から味が出続けて、二煎目が渋くなってしまうからです。二煎目は、一煎目より熱いお湯で、抽出時間を短くします。
急須は、茶こしの目が細かいものが向いています。目の粗い茶こしだと、細かな茶葉が詰まって注ぎにくくなることがあります。
よくある質問
Q. 深蒸し茶と普通の煎茶、どちらがおいしいですか?
どちらが上ということはなく、好みで選んで大丈夫です。濃厚な味わいや、旨味の濃い味わいを求める方には深蒸し煎茶を、香り高いお茶や、さっぱりとすっきりした味わいを求める方には浅蒸しの煎茶をおすすめします。
Q. 深蒸し茶がにごっているのは、品質が悪いからですか?
いいえ。にごりは、細かな茶葉の粒が湯の中に漂っているためで、深蒸し煎茶ならではの特徴です。この粒が、濃い緑の水色とコクのある味わいをつくっています。
Q. 深蒸し茶は何煎まで楽しめますか?
深蒸し煎茶は味が出やすいぶん、一煎目にしっかり味が出ます。二煎目までを目安に、二煎目は熱めのお湯で短く淹れてみてください。
Q. 深蒸し茶で、急須の茶こしが詰まります。
細かな茶葉が多いため、目の粗い茶こしだと詰まりやすくなります。深蒸し用の目の細かい網がついた急須を使うと、最後まで注ぎやすくなります。
浅蒸しと飲み比べてみる
同じ煎茶でも、蒸す時間ひとつで、茶葉の形も、水色も、味わいも大きく変わります。浅蒸しと深蒸しを飲み比べると、「蒸す」というたったひとつの工程が、どれほど一杯を左右しているかがよくわかります。
深蒸しのとこのはやいしずえと、浅蒸しのはなしずくやあまもあを並べて、ぜひ好みの一杯を探してみてください。ほかのお茶は茶葉の一覧からご覧いただけます。