煎茶とは|特徴と味わいの違い、玉露・深蒸し煎茶との違い、おいしい淹れ方まで
産地を巡り、いろいろなお茶を飲んできた今でも、やはり「日本といえば煎茶」だと思います。茶づくりはとても土着的な仕事で、お茶をつくれる土地、まして美味しくつくれる土地は、世界中でもかぎられています。その中で、茶葉を蒸して揉む煎茶を美味しくつくる道を選び、磨き続けてきたのが日本です。
煎茶とは、日光を浴びて育った茶葉を、摘んですぐに蒸して酸化を止め、揉みながら乾かして細く整えた緑茶です。日本でつくられるお茶のおよそ半分を占める、日本茶の基本といえるお茶です。日本人が日本茶・緑茶と聞いてまず思い浮かべるのは、この煎茶だと思います。この記事では、煎茶の特徴と歴史、産地・品種・製法・栽培法から見た選び方、玉露や深蒸し煎茶との違い、おいしい淹れ方までを解説します。
煎茶とは

煎茶は、日光を遮らずに育てた茶葉を摘み、すぐに蒸して酵素の働きを止める「殺青(さっせい)」を行い、揉みながら乾かして、針のように細い形に整えたお茶です。摘んだ葉を酸化させずにつくる「不発酵茶」、つまり緑茶の一種で、青々しい香りと、旨味・渋味の釣り合いのとれた味わいが持ち味です。
「緑茶」と「煎茶」は同じ意味で使われることもありますが、緑茶は不発酵茶全体の呼び名で、煎茶はその中のひとつです。玉露や抹茶、ほうじ茶も緑茶の仲間で、それぞれの違いは「お茶の種類一覧」で詳しく紹介しています。
日本でつくられる荒茶のうち、煎茶は48.1%(2025年産)を占め、2番目に多いてん茶(抹茶の原料)の5倍以上です。煎茶は全国の産地でつくられ、日本でもっとも一般的に飲まれているお茶です。煎茶がどのような工程でつくられるかは、「お茶ができるまで」で詳しく解説しています。
煎茶の歴史
いま私たちが飲んでいる煎茶の形ができたのは、江戸時代の中ごろです。それまでのお茶の多くは、茶葉を蒸したり茹でたりして乾かしただけの、色も香りも素朴な「煎じ茶」だったといわれます。
1738年、京都・宇治田原の湯屋谷に暮らした永谷宗円(ながたにそうえん)が、蒸した茶葉を乾かす前に、焙炉(ほいろ)の上で揉みながら乾かす「青製煎茶製法」を考え出します。揉む工程が加わったことで、鮮やかな緑色と豊かな香り、味わいをもつ、今につながる煎茶が生まれました。
ちなみに、お茶漬けでおなじみの「永谷園」を創業した永谷嘉男は、宗円(本名は永谷宗七郎)から数えて10代目にあたります。宗円の命日にちなんで、5月17日は「お茶漬けの日」として記念日にもなっています。今の煎茶の生みの親は、意外と私たちの食卓の近くにいるのです。
この製法は「宇治製法」とも呼ばれ、江戸で煎茶が評判になると、全国の産地へ広まっていきました。
明治に入ると、手揉みに頼っていた茶づくりに機械が導入されます。その立役者が、埼玉の医師だった高林謙三(たかばやしけんぞう)です。自ら茶園を拓いて手揉みの限界を知った高林は、1885年に製茶機械の特許を取り、のちに葉を揉む「粗揉機」を完成させました。その基本のつくりは、100年以上たった今も茶工場で使われています。手で揉む動きを段階ごとに再現した機械によって、蒸して揉む煎茶は、日本の緑茶の中心になっていきます。
中国をはじめ、緑茶をつくる土地はほかにもありますが、その多くは釜で炒って殺青するお茶です。茶葉を蒸して揉み、細く整える煎茶をここまで磨き上げてきたのは日本ならではのことで、日本の暮らしにこれほど馴染んでいるのも、その積み重ねがあるからだと思います。
煎茶の選び方
煎茶を選ぶときの軸はたくさんありますが、なかでも味わいを大きく左右するのが「産地」と「品種」です。そこに「製法」と「栽培法」を加えた4つの視点を知っておくと、パッケージの表示を見ただけで、どんな味わいのお茶なのかがおおよそ想像できるようになります。
産地
煎茶は全国でつくられていますが、栽培面積では静岡県・鹿児島県・三重県の上位3県で全国の約7割を占めます。荒茶の生産量では、2024年産と2025年産で鹿児島県が静岡県を上回り、統計が始まって以来はじめて日本一になりました。
同じ県の中でも、川霧が立ちこめる山あいの茶園と、日差しをたっぷり浴びる平地の茶園とでは、お茶の個性が変わります。よく言われるのは、山のお茶は香り高く、平地のお茶はコクのある濃厚な味わいになることが多いということです。たとえば、鹿児島・南九州のやぶきたでつくるとこのはは力強さのなかに丸みのある王道の味わい、静岡・本山の山あいで育ったはなしずくは透き通った香りが持ち味です。
品種
日本の茶園の64%は「やぶきた」という品種で、静岡県では86%にのぼります(2025年度)。やぶきたは、旨味と渋味の釣り合いのとれた、煎茶らしい味わいの品種です。
一方で、花のような香りをもつ「しずかおり」や、鹿児島で多く育てられている早生の「ゆたかみどり」など、品種が変われば香りや味わいも大きく変わります。
また、古くから各地に根づいてきた「在来種」の茶樹は、一本ごとに性質が違い、複雑で奥行きのある味わいになります。たゆまの茶荘では、しずかおりのはなしずく、樹齢100年を超える在来種のながときを扱っています。
製法
製法の違いは、そのままお茶の種類の違いにもなります。蒸して殺青する煎茶の中でも、蒸し時間の短い「浅蒸し」は澄んだ水色と繊細な香りに、蒸し時間を長くした「深蒸し」は濃い緑の水色とまろやかな味わいになります。
深蒸し煎茶については「深蒸し煎茶とは」で詳しく解説しています。
さらに、蒸すかわりに熱した釜で炒る「釜炒り茶」や、精揉をせずに丸く仕上げる「ぐり茶(玉緑茶)」も、一般的には煎茶の仲間として親しまれています。
摘む時期によっても、煎茶の味わいは変わります。春に最初に摘む「一番茶」は旨味と香りが豊かで、そのあとに摘む「二番茶」はすっきりとした渋味が持ち味です。詳しくは「一番茶と二番茶の違い」で解説しています。
栽培法
栽培法で味わいを大きく変えるのが、摘む前に茶園を覆うかどうかです。摘む前の1週間ほど覆って日光を遮ると、旨味のもとになるテアニンが渋味のもとになるカテキンに変わるのが抑えられ、旨味の濃い「かぶせ茶」になります(商品例: あまもあ)。詳しくは「被覆栽培(被せ)とは?」で解説しています。
もうひとつの軸が、農薬や化学肥料を使わずに育てたかどうかです。有機JASの認証を受けた煎茶もあり、育て方からお茶を選ぶという選び方もできます。農薬や化学肥料に頼らずに育てたお茶は、お茶本来の味わいを楽しめるのが魅力です。たゆまの茶荘のいしずえは、宮崎で栽培期間中に農薬や化学肥料を使わずに育てた茶葉の煎茶で、餡子のようなしっとりとした甘さが持ち味です。
煎茶とほかのお茶の違い
煎茶とよく比べられる緑茶を、育て方とつくり方、味わいで並べると次のようになります。
| お茶 | 育て方 | つくり方 | 味わいと香り |
|---|---|---|---|
| 煎茶 | 日光を浴びて育てる | 蒸して揉み、細く整える | 青々しい香りと、旨味・渋味の釣り合い |
| 深蒸し煎茶 | 煎茶と同じ | 蒸し時間を煎茶の2〜3倍ほどに長くする | 濃い緑の水色と、まろやかな味わい |
| かぶせ茶 | 摘む前の7日ほど覆う | 煎茶と同じ | 煎茶のすっきりとした味わいと、玉露のような旨味 |
| 玉露 | 摘む前の20日ほど覆う | 煎茶と同じ | 出汁のような濃い旨味 |
| 番茶 | 遅い時期に摘んだ大きな葉や茎 | 煎茶と同じように蒸して揉む | すっきりと軽い、日常のお茶 |
| ほうじ茶 | — | 煎茶や番茶を、さらに強い火で焙じる | 香ばしく、渋味や苦味は穏やか |
玉露やかぶせ茶と煎茶のいちばんの違いは、つくり方ではなく育て方です。同じように蒸して揉んでつくっても、摘む前に覆うかどうかで、旨味の濃さが大きく変わります。ほうじ茶は、煎茶や番茶を焙じてつくる、煎茶から生まれたお茶です。
煎茶の成分と、研究で報告されている働き
煎茶の味わいは、おもに3つの成分の釣り合いでできています。
- テアニン(旨味・甘味): お茶に特有のアミノ酸です。日光を浴びるとカテキンに変わるため、一番茶や、摘む前に覆ったお茶に多く含まれます
- カテキン(渋味): お茶のポリフェノールの一種です。日光を浴びて育つ煎茶は、玉露より多くのカテキンを含みます
- カフェイン(苦味): 煎茶の浸出液100mlあたり約20mgで、玉露より少なく、コーヒーの約3分の1です(日本食品標準成分表)
テアニンは低い温度でもよく溶け出し、カテキンは高い温度ほど溶け出しやすいため、お湯の温度で旨味と渋味の釣り合いが変わります。次の「淹れ方」で温度を大切にするのは、そのためです。
これらの成分については、さまざまな研究が進められています。テアニンについては、摂取したあとに、落ち着いているときに多く見られる脳波(α波)が増えたという報告があり、カテキンについては、抗酸化作用などを調べた研究が数多くあります。それぞれの成分については、「テアニンとは」「カテキンとは」「お茶のカフェイン」で詳しく紹介しています。
※研究で報告されている内容の紹介であり、特定の疾患の予防や治療を目的とするものではありません。
煎茶のおいしい淹れ方
煎茶は、お湯の温度と待つ時間で味わいが大きく変わります。まずは、一杯(150ml)分の次の目安から試してみてください。
| 茶葉 | お湯の温度 | 待つ時間 |
|---|---|---|
| 4〜5g | 70〜80℃ | 1分40秒〜2分 |
- 沸かしたお湯を湯呑みに注ぎ、70〜80℃まで冷ます(湯呑みも温まります)
- 急須に茶葉を入れ、冷ましたお湯を注いで蓋をする
- 1分40秒〜2分ほど、じっくり待つ
- 湯呑みに、最後の一滴まで注ぎ切る
二煎目は、一煎目より熱いお湯で、待つ時間を短くします。渋味を抑えて旨味を引き出したいときは温度を低めに、すっきりとした香りを立てたいときは高めにすると、同じ茶葉でも印象が変わります。
よくある質問
Q. 煎茶と緑茶の違いは何ですか?
緑茶は、摘んだ葉を酸化させずにつくるお茶(不発酵茶)全体の呼び名で、煎茶はその中のひとつです。玉露や抹茶、ほうじ茶も緑茶の仲間で、煎茶はその中でもっとも多くつくられています。
Q. 煎茶と玉露の違いは何ですか?
いちばんの違いは育て方です。煎茶は日光を浴びて育った茶葉でつくり、玉露は摘む前の20日ほど茶園を覆って日光を遮った茶葉でつくります。そのため玉露は、出汁のような濃い旨味をもちます。
Q. 煎茶は何煎まで楽しめますか?
良い煎茶なら、二煎目、三煎目まで楽しめます。二煎目からは、一煎目より熱いお湯で、待つ時間を短くするのが基本です。煎を重ねるごとに変わっていく味わいも、煎茶の楽しみのひとつです。
Q. 煎茶にカフェインは含まれますか?
含まれます。他のお茶やコーヒーとの比較は、「お茶のカフェイン」で詳しく解説しています。
Q. 煎茶の茶葉はどう保存すればよいですか?
茶葉は光、湿気、熱、においを嫌います。開封したら茶筒などの密閉できる容器に移し、涼しい場所で保存して、なるべく早めに飲みきりましょう。
いつもの煎茶から、飲み比べを
同じ「煎茶」でも、産地や品種、蒸し方や育て方が変われば、一杯の印象はまったく違います。いつも飲んでいる煎茶の隣に、産地や品種の違う一杯を並べてみると、煎茶の奥行きがきっと見えてきます。
日本の暮らしにいちばん近いお茶だからこそ、じっくり味わう価値があります。気になったお茶があれば、下の関連商品や茶葉の一覧から、まずは一杯分から試してみてください。